「転職したいけれど、会社を選ぶ基準がわからない」と悩む人は多くいます。新卒や第二新卒で転職を考える際、自分に合った会社を見極めることは簡単ではありません。明確な基準がないまま転職活動を始めると、入社後に仕事内容や職場環境が期待と異なり、早期離職につながる恐れがあります。
この記事では、後悔しない転職を実現するために必要な「転職の軸」の必要性やつくり方、面接での伝え方について解説します。転職の軸とは、仕事選びで最も大切にしたい価値観のことです。軸を明確にすることで、企業選びの基準が定まり、面接でも自信を持ってアピールできるようになります。
記事を読めば、自分にとって譲れない基準が明確になり、数ある企業の中から納得できる転職先を見つける力が身に付きます。
転職の軸とは転職する際に最も大切にしたい基準や考え方

転職の軸とは、転職活動において自分が最も大切にしたと考える基準や価値観のことです。多くの求人の中から自分に合う会社を選ぶ際、転職の軸が判断基準となります。入社後のミスマッチを防ぐうえでも、転職の軸は役に立ちます。
将来の理想の自分や働き方を実現するためにも、仕事の軸を持っておくことが有効です。転職の軸は、仕事に求めるものや働く目的を言語化したものと言えます。転職の軸は、転職理由とは別の考え方として整理できます。
転職理由との違い
転職活動では、多くの人が「転職理由」と「転職の軸」を混同しがちですが、それぞれの出発点や目的は異なります。それぞれの違いは以下のとおりです。
比較ポイント | 転職の軸 | 転職理由 |
背景 | 新しい職場への理想や目標 | 今の会社への不満や問題 |
方向性 | なぜ辞めたいのか | どのような働き方をしたいのか |
具体例 | 給与が低いから辞めたい | 成果を正当に評価されたい |
使い方 | 退職理由 | 志望動機や企業選びの理由 |
転職理由は「現状の理由」であり、転職の軸は「将来の理想」に向けた考え方です。転職理由と転職の軸を切り分けて整理することで、面接でも自分の考えをより明確に伝えやすくなります。
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転職活動における軸の必要性

転職活動をする際、軸があれば求人に振り回されず、自分に合った企業を見極めやすくなります。転職活動に転職の軸が必要な理由は以下のとおりです。
- 転職先選びの基準を明確にするため
- ミスマッチを防ぐため
- 面接対策になるため
転職先選びの基準を明確にするため
転職の軸を持つことで、自分に合った転職先を選ぶための基準ができます。多くの求人情報の中から、自分にとって本当に大切なことを見失わずに企業を選べるようになるからです。転職の軸がない場合、何を重視すべきかが曖昧になり、求人情報を見て迷いが生じる可能性があります。
自分だけの「ものさし」として転職の軸を持っていれば、情報に振り回されることなく、冷静に企業を比較・検討できます。
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ミスマッチを防ぐため

転職の軸を持てば、入社後に実際の業務や環境が期待と異なって後悔することを防げます。自分に合わない企業を選んでしまうと、仕事への意欲が低下したり、早期に離職してしまったりするリスクが高まります。
転職の軸は、企業が本当に自分に適しているかどうかを見極めるための「ものさし」です。転職の軸があれば、自分の価値観や働き方に合わない企業を事前に避けることが可能です。自分に合った企業を見極めることで納得のいく選択ができ、入社後のモチベーションも高まりやすくなります。
面接対策になるため
転職の軸を明確にすると、面接において自信を持って受け答えができ、選考通過の可能性が高まります。転職の軸がはっきりしていると、面接時に以下の効果を発揮します。
- 志望動機に一貫性が出る
- キャリアの方向性が明確になる
- 想定外の質問にも落ち着いて対応できる
- 自分の価値観を企業と重ねて伝えられる
- 企業研究を踏まえた質問ができる
- 自己PRに説得力が出る
自分の軸を理解しておけば企業選びの基準が明確になり、話す内容がブレません。結果として、面接官に良い印象を与えることが可能です。
転職の軸のつくり方

転職の軸を明確にすることは、理想の企業を見つけるために欠かせません。企業選びの判断基準があることで、転職先の選択に迷わず、自分に合った転職先を選びやすくなります。転職の軸のつくり方は以下のとおりです。
- 転職理由を明確にする
- 自己分析する
- 企業研究する
- 希望条件やビジョンに優先順位をつける
転職理由を明確にする
転職理由を明確にすることは、後悔しない転職を実現するための大切な第一歩です。理由を言語化すると、自分が転職において何を最も重視しているのか、どのような課題を解決したいのかがはっきりします。転職理由が曖昧なままだと、新しい職場でも同じような悩みを繰り返してしまう可能性があります。
転職理由を明確にするためのポイントは以下のとおりです。
- 現職で感じている不満や違和感
- 転職で解決したいこと・実現したいこと
- やりがいや成長を感じた仕事の場面
- ストレスを感じた仕事や避けたい環境
振り返りと現状整理をすると、自分にとって本当に大切な価値観や転職で譲れない軸が見えてきます。
自己分析する
転職活動において自分自身を深く理解することは、自分に合った仕事や働き方を見つけるために欠かせません。転職理由を明確にしたあとは、これまでの経験や感情、得意・不得意なこと、将来の理想などを振り返ってみましょう。
過去の仕事でやりがいを感じた瞬間や、ストレスを感じた場面を思い出すことで、自分に合う職場環境が見えてきます。自分に合った選択をするうえで、強みやスキル、苦手なこと、興味のある業界や働き方を整理することもおすすめです。自分の価値観や考え方を言語化すると、転職の軸が少しずつ形になっていきます。
企業研究する

自分に合った企業を見つけるには、自分の価値観や希望と合うかを見極めるために企業研究が必要です。自己分析で明らかになった強みや大切にしたいことを軸に、企業の情報を多角的に調べましょう。事前の情報収集によって、入社後に実際の環境が期待と異なり後悔するリスクを減らせます。
企業研究では、以下の点を確認しておくと、自分に合った企業かどうかを判断しやすくなります。
- 求める人物像
- 理念や事業内容
- 働き方や社風
- 待遇や成長環境
複数の企業を比較しながら情報を整理することで、納得のいく転職先選びにつながります。
希望条件やビジョンに優先順位をつける
転職ですべての希望をかなえることは難しいため、希望条件や将来のビジョンに優先順位をつける必要があります。優先順位をあらかじめ決めておけば、最も重視したいことが明確になり、後悔のない選択が可能です。転職に求める希望や理想は、思いつく限り書き出して整理しましょう。
書き出した内容は、以下の3つに分けて分類すると整理しやすくなります。
- 絶対に譲れない条件
- 可能であればかなえたい条件
- 妥協できる条件
優先順位を決めた理由もあわせて考えれば、仕事に対する自分の本音や価値観がより明確になります。最終的に重視する転職の条件を3〜5個に絞ると、転職活動の軸を明確にすることが可能です。
転職の軸の例

転職の軸が明確であれば、数多くの求人の中から自分に合った企業を見つけやすくなります。転職の軸の具体例を5つ紹介します。
- 仕事内容に関する軸
- キャリアアップに関する軸
- 給与・報酬に関する軸
- 労働環境に関する軸
- 企業文化に関する軸
仕事内容に関する軸
仕事内容に関する軸とは、どのような仕事に興味を持ち、仕事を通じて何を実現したいのかを考えることです。仕事内容の軸が明確であれば、自分に合った業務内容を選びやすくなり、入社後のミスマッチを防ぐことにもつながります。
自分にとって最適な仕事を選ぶために、仕事内容のどの部分に注目すべきかを整理してみてください。
キャリアアップに関する軸

キャリアアップを転職の軸にする場合は、自分が成長できる環境やチャンスがあるかを見極めましょう。スキルを高め、さまざまな経験を積むことは、将来の活躍や理想の働き方の実現につながります。キャリアアップを考えるうえで、具体的に注目したいポイントは以下のとおりです。
- スキルや専門性を高められる機会がある
- 若手でも挑戦できる仕事を任せてもらえる
- キャリアのステップが明確に示されている
スキルを磨きながら挑戦できる職場を選ぶことで、将来のキャリア形成がスムーズになります。
給与・報酬に関する軸
給与や報酬は、生活の基盤となるだけでなく、仕事への満足度やモチベーションにも大きく影響します。希望に合った報酬が得られるかどうかを事前に見極めておくと、安心して働き続けることが可能です。年収や昇給の仕組み、賞与や評価の基準などは、事前に確認しておきましょう。
希望する企業の手当や退職金制度、将来の昇給見込みなども確認しておきたいポイントです。希望する条件を確認しておくと、納得のいく待遇で働ける企業を見つけやすくなります。
労働環境に関する軸

職場の快適さや働きやすさは、やる気や心身の健康に大きく影響するため、労働環境は職場選びの重要な判断基準です。自分に合った環境で働けるかどうかを見極めることは、長く安心して仕事を続けるための前提になります。働きやすい職場を選ぶために、以下の点を確認しましょう。
- 勤務時間や残業の有無・頻度
- 休日の取りやすさや働き方の柔軟性
- 職場の雰囲気や人間関係
- 育児・介護支援やメンタルヘルスへの配慮
希望に合った条件が整った職場は、長く健康的に働き続けるための土台となります。
企業文化に関する軸
企業文化に関する軸は、自分の価値観や職場の雰囲気がマッチするかを判断する基準となります。会社の文化が自分に合っていれば、継続して働きやすく、仕事への満足度も高まります。意見の言いやすさやチームで協力する姿勢、働き方への配慮などから企業文化を見極めることが可能です。
多様性を尊重する風土や社員の成長を支援する制度なども、自分に合うかどうかを判断するポイントになります。どのような文化の中で働くと前向きな気持ちで過ごせるのかをあらかじめ整理しておきましょう。
面接で転職の軸を聞かれたときの答え方

転職の軸を面接官に伝える際は、自分の考えをわかりやすく伝えることで面接官に好印象を与え、説得力も高まります。効果的な伝え方は以下のとおりです。
- 転職動機と一貫性を持たせる
- 転職の軸と過去の経験を関連付ける
- 志望企業に合わせてアピールする
転職動機と一貫性を持たせる
転職動機と面接で話す内容に一貫性を持たせると、面接官に納得感と信頼感を与えることが可能です。転職理由や志望動機に一貫性がないと、説得力がなく疑問を持たれる可能性があります。転職を考えたきっかけと転職で実現したいことがつながっていると、話に一貫性が生まれます。
転職の軸が企業の理念や事業内容、社風とどう一致しているかを明確に伝えれば、好印象を与えるうえで効果的です。自己PRやキャリアプランなども、面接全体で話す内容が転職の軸と矛盾しないよう整理しておきましょう。
» キャリアプランとは?理想の仕事や働き方を実現させる方法を解説
転職の軸と過去の経験を関連付ける

転職の軸を伝える際は、これまでの経験と結びつけて話すと説得力が増します。過去にやりがいを感じた仕事や、自分らしく働けた場面を振り返ると、なぜその軸を大切にしたいのかが明確になります。困難を乗り越えた経験や、働き方について考えるきっかけとなった出来事を土台として軸を語るのも効果的です。
実際の体験をもとにした軸であれば、話に深みが出て、転職の軸が相手にも伝わりやすくなります。どのような経験を通じてその軸が形成されたのかを状況・考え・行動の流れで簡潔に伝えると、より明確に伝わります。
志望企業に合わせてアピールする
面接で転職の軸を伝える際は、志望する企業に合わせて内容を調整し、企業が求める人材との一致を明確にしましょう。自分の価値観と、企業の理念や事業内容がどのように一致しているかを具体的に伝えると、相手に伝わりやすくなります。
入社後の活躍をイメージしてもらうためには、求められる人物像や職務内容に自分の軸を結びつけて説明することがおすすめです。希望する企業でなぜ働きたいのかを転職の軸をとおして語れば、志望動機に具体性と説得力が加わります。
まとめ

自分だけの転職の軸を明確にすれば、転職活動を成功させ、納得のいくキャリアを築くことが可能です。転職の軸があれば、企業選びの判断基準が明確になり、入社後のミスマッチを防ぐことにつながります。軸をつくるには、転職理由を整理し、自己分析を通じて自分の強みや価値観を深く理解しましょう。
企業研究を行い、自分の希望条件に優先順位をつけていけば転職先に求める条件が明確になります。面接では、転職の軸と過去の経験、志望理由を結びつけて伝えることで、採用担当者にあなたの考えがしっかり伝わります。焦らず丁寧に向き合いながら、自分らしく働ける環境を実現するための転職の軸を見つけましょう。