退職手続きは、退職の意思表示から書類の受け取り、退職後の公的手続きまで幅広く、何をいつ進めればいいのかわからない人も多いのではないでしょうか。手続きの流れを把握しないまま進めると、引き継ぎや有給休暇の消化の日程を組めず、希望した日に退職できなくなる場合もあります。
そこで、退職日から逆算してやることを決めておけば、手続きの抜け漏れを防ぎながら、転職先への入社まで余裕を持って準備できるでしょう。この記事では、退職手続きのスケジュールや流れ、会社とやり取りする書類、退職後に必要な公的手続きを解説します。退職を決めたものの、何から手をつければいいか迷っている人はぜひ参考にしてください。
退職手続きのスケジュール
退職手続きは、退職日を決めてから退職後の公的手続きを終えるまで、3〜4か月ほどかけて進めるのが一般的です。時期ごとにやることは、以下のとおりです。

退職前のスケジュールは、就業規則で定められた申し出期限や業務の繁忙期によって前後します。一方で、退職後の健康保険や年金の切り替えには期限があるため、退職日が決まった時点で必要な手続きを確認しておきましょう。退職日の翌日に転職先へ入社する場合は健康保険や年金の手続きを転職先が行うため、退職者がやることは書類の提出が中心です。
退職手続きの流れ

退職手続きは、退職日を決めるところから始まり、退職当日の対応で会社とのやり取りを終える順に進みます。主な手順は以下のとおりです。
- 就業規則を確認して退職日を決める
- 退職の意思を伝える
- 退職願・退職届を提出する
- 業務を引き継ぐ
- 有給休暇を消化する
- 退職当日の対応をする
最初に退職日を決めておけば、上司に意思を伝える時期や、引き継ぎ・有給休暇の消化の日程を逆算して組めます。
1. 就業規則を確認して退職日を決める
退職日は、就業規則で定められた退職の申し出期限と、転職先の入社日の両方から逆算して決めましょう。多くの会社は退職の1〜2か月前までに申し出るよう就業規則で定めており、この期限を守れば上司との日程交渉もスムーズに進みます。
転職先の入社日が迫っていて就業規則の期限に間に合わない場合でも、期間の定めのない雇用であれば、法律上は申し出から2週間で退職できます(民法第627条)。ただし、2週間では引き継ぎや有給休暇の消化に必要な期間を確保しにくいため、できる限り就業規則の期限に合わせて退職日を設定しておくと安心です。
就業規則で確認しておきたい項目は以下のとおりです。
- 退職を申し出る期限
- 退職届の提出先や書式
- 退職金の支給条件
退職金は勤続年数や退職日によって支給額が変わる場合があるため、退職日を決める前に確認しておきましょう。また、入社日まで空白期間がある場合は、退職日が月末かどうかで、退職月の社会保険料を会社と自分のどちらで納めるかが変わります。
2.退職の意思を伝える
退職日の目安が決まったら、直属の上司に口頭で退職の意思を伝えましょう。同僚や人事部に先に話して人づてに上司に伝わると、関係がこじれ、引き継ぎの調整に影響するおそれもあります。話を切り出す際は、事前に「ご相談したいことがあるのでお時間をいただけますか」と声をかけるかメールで日程を押さえ、ほかの人に聞かれない場所で話す時間を確保します。
伝える際は「一身上の都合により、◯月◯日付で退職させていただきたいと考えています」のように、退職日まで具体的に伝えましょう。「退職を考えている」と相談の形で切り出すと、引き止めの余地が残り、退職日が決まらないまま話が長引く場合があります。引き止められた場合も、退職日が決まっていることを改めて伝え、退職の意思が変わらないことをはっきり示しましょう。退職理由を聞かれた場合は、「新しい分野に挑戦したい」のように今後のキャリアに関する理由を伝えると、前向きな話として受け止めてもらいやすくなります。
有給休暇の消化を希望する場合も、この時点で伝えておけば、引き継ぎと合わせた日程を上司と相談できるでしょう。
3.退職願・退職届を提出する
上司に退職の意思を伝えて了承を得たら、退職届を提出しましょう。宛先は代表取締役などの会社の代表者とし、直属の上司に手渡しで提出します。会社によっては退職届の前に退職願の提出を求められる場合もあるため、どちらを出すかは就業規則や上司の指示に従いましょう。
退職願と退職届は、提出したあとに撤回できるかどうかが異なります。退職願は会社に退職を願い出る書類で、会社が承諾する前であれば撤回できる場合があります。一方で退職届は退職を確定させる書類のため、提出後は会社の同意がない限り撤回できません。
退職届に記載する主な項目は以下のとおりです。
- 提出日
- 宛先(会社名と代表者名)
- タイトル(退職届)
- 退職理由
- 退職日
- 所属部署と氏名
自己都合で退職する場合、退職理由は「一身上の都合により」と記載すれば詳細な内容を示す必要はありません。会社指定の書式があればそれを使い、指定がなければ手書きでもパソコンでの作成でも問題ありません。提出した退職届はコピーを取って手元に保管しておくと、退職日などで認識の食い違いが起きたときに提出内容を確認できます。
4.業務を引き継ぐ
退職届を提出したら、上司と相談して引き継ぎのスケジュールを決めましょう。引き継ぎ期間は2週間〜1か月程度が目安で、有給休暇の消化に入る前に終えておけば、後任者からの質問にも出社中に答えられます。
口頭だけの説明では後任者が内容を聞き漏らす場合もあるため、担当業務は引き継ぎ書にまとめて渡しましょう。引き継ぎ書に記載しておきたい内容は以下のとおりです。
- 担当業務の一覧と作業手順
- 進行中の案件の状況と今後の予定
- 取引先の担当者と連絡先
- 過去に起きたトラブルと対応方法
- 業務データの保存場所とシステムの利用権限
引き継ぎ書を残しておけば、退職後に後任者が対応に迷ったときも、記録をもとに判断できます。文書だけでは伝わりにくい作業のコツや判断の基準は、後任者と一緒に業務を進めながら説明しましょう。
取引先を担当している場合は、退職日の1〜2週間前を目安に、上司や後任者と一緒にあいさつに伺います。訪問が難しい場合は、電話やメールでの連絡でも問題ありません。あいさつではこれまでのお礼と後任者の紹介を伝え、転職先の詳しい話は控えましょう。
5.有給休暇を消化する
引き継ぎを終えたら、残っている有給休暇を消化しましょう。有給休暇の取得は、法律で認められた労働者の権利です。会社は業務の都合で取得日の変更を求めることはできますが、退職日より後の日には変更できないため、退職前の消化を原則として拒否できません。残日数は給与明細や勤怠システム、人事部への問い合わせで確認できます。
消化の方法には、退職日の直前にまとめて取る方法と、引き継ぎの合間に分散して取る方法があります。まとめて取る場合は最終出社日が退職日より前になるため、貸与物の返却や書類の受け取り方法を最終出社日までに確認しておきましょう。業務の都合で消化しきれなかった有給休暇の買取は会社の義務ではないため、買取制度の有無は就業規則で確認しておく必要があります。
有給休暇の消化中も退職日までは会社に在籍しているため、転職先の入社日は退職日の翌日以降に設定しましょう。入社日が消化期間と重なると、健康保険や厚生年金が二重加入の状態になる場合があります。
6.退職当日の対応をする
退職当日(有給休暇をまとめて消化する場合は最終出社日)は、会社からの貸与物の返却と、退職後に受け取る書類の確認を済ませましょう。当日にやることは以下のとおりです。
- 会社からの貸与物を返却する
- 机やロッカーの私物を持ち帰る
- 退職後に届く書類の送付先と時期を確認する
- 最終給与や退職金の支払日を確認する
- 上司や同僚にあいさつする
離職票や源泉徴収票は退職後に郵送されるのが一般的なため、送付先の住所に変更がないかも伝えておくと受け取り漏れを防げます。退職証明書は本人が請求した場合に発行されるため、転職先から提出を求められている場合は当日までに依頼しておきましょう。
私物を整理する際は、業務で作成したデータや資料を個人のパソコンや記憶媒体に移さないよう注意が必要です。会社の情報を持ち出すと、退職後でも秘密保持義務の違反を問われる場合があります。
退職時に会社へ返却するもの

会社から貸与された物品や業務で使った資料は、退職日までにすべて返却しましょう。返却漏れがあると、退職後に郵送での返却を求められたり、紛失した場合は費用の負担を求められたりする場合があります。ここでは、返却が必要な主なものを物品と資料・データに分けて解説します。
会社から貸与されたもの
社員証や業務用のパソコンなど、会社から貸与されたものは退職日までに返却する必要があります。主な貸与物は以下のとおりです。
- 社員証や入館証
- 自分の名刺
- 制服や作業着
- パソコンやスマートフォンなどの業務用端末
- オフィスやロッカーの鍵
- 会社名義のクレジットカード
- 会社から支給された通勤定期券
- 健康保険の資格確認書(交付されている場合)
健康保険の資格確認書は、加入している健康保険によって返却を求められる場合と自分で破棄する場合があるため、会社の指示に従いましょう。マイナ保険証を利用している場合、健康保険に関して返却するものはありません。会社から支給された通勤定期券は、退職日以降の期間分について払い戻しや精算を求められる場合があります。入社時に受け取った貸与物の一覧があれば、照らし合わせながら準備すると返却漏れを防げます。
業務で使った資料・データ
業務で使った資料やデータも会社の情報資産のため、退職時にはすべて返却するか、会社の指示に従って削除しましょう。返却・削除の対象になる主なものは以下のとおりです。
- 業務マニュアルや研修資料
- 取引先から受け取った名刺
- 顧客情報が記載された書類
- 私用のスマートフォンやパソコンに保存した業務データ
私用の端末に業務のメールやチャットの履歴、取引先の連絡先が残っている場合は、退職日までに削除しておきましょう。自宅に持ち帰って作業した書類が残っていれば、あわせて会社へ返却しましょう。
退職手続きで会社から受け取るもの

会社から受け取る書類は、転職先での入社手続きや失業給付の申請、確定申告などに使います。退職時や退職後に受け取る主な書類は以下のとおりです。
- 雇用保険被保険者証
- 源泉徴収票
- 離職票
- 退職証明書
必要な書類は退職後の状況によって異なります。転職先が決まっている場合は離職票が不要なことが多い一方で、源泉徴収票は転職先の年末調整で提出を求められます。書類ごとに用途と受け取る時期が異なるため、自分に必要な書類を確認しておきましょう。
雇用保険被保険者証
雇用保険被保険者証は、雇用保険に加入していることを証明する書類で、転職先での雇用保険の加入手続きで提出を求められます。入社時に本人へ渡す会社と、会社が保管して退職時に返す会社があるため、手元にない場合は退職前に人事部へ確認しましょう。紛失した場合は、ハローワークで再発行できます。
源泉徴収票
源泉徴収票は、その年に会社から支払われた給与と、差し引かれた所得税の額が記載された書類です。年の途中で退職した場合、会社には退職後1か月以内に源泉徴収票を交付する義務があります。
退職した年の所得税は、年末調整か確定申告のどちらかで精算が必要です。年内に転職する場合は転職先の年末調整で精算されるため、前の会社の源泉徴収票を転職先に提出しましょう。年内に再就職しない場合は、源泉徴収票をもとに自分で確定申告を行い、払いすぎた所得税があれば還付を受けられます。源泉徴収票がないと年末調整も確定申告も進められないため、退職後1か月を過ぎても届かない場合は会社に発行を依頼しましょう。
離職票
離職票は、ハローワークで失業給付を申請する際に必要な書類です。転職先が決まっていて失業給付を受け取らない場合は、基本的に必要ありません。
離職票は会社がハローワークで発行の手続きを行うため、手元に届くのは退職後1〜2週間が目安です。マイナポータルと雇用保険の情報を連携していれば、郵送を待たずにマイナポータルで受け取ることも可能です。本人が希望しないと発行されない場合もあるため、失業給付を受け取る予定があれば退職前に会社へ発行を依頼しましょう。
離職票に記載された離職理由が自己都合か会社都合かによって、失業給付を受け取れるまでの期間が変わります。届いたら記載内容を確認し、事実と異なる場合は申請時にハローワークへ申し出ましょう。
退職証明書
退職証明書は、在籍期間や退職の理由などを会社が証明する書類です。本人が請求すると、会社は労働基準法にもとづいて発行しなければなりません。転職先から提出を求められる場合のほか、離職票が届く前に国民健康保険へ加入する際、退職を示す書類として使える場合もあります。
証明書に記載する項目は本人が選べるため、賃金など転職先に知られたくない項目を除いて請求することも可能です。発行までに時間がかかる場合もあるため、必要な場合は退職前に依頼しておきましょう。
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退職後に行う公的な手続き

退職後に自分で行う公的な手続きは、転職先へ入社するまでに空白期間があるかどうかで変わります。退職日の翌日に入社する場合は健康保険や年金の手続きを転職先が行うため、本人が行う手続きはほとんどありません。空白期間がある場合に必要な主な手続きは以下のとおりです。
- 健康保険の手続き
- 雇用保険(失業保険)の申請
- 年金の切り替え
- 住民税・所得税の確認
国民健康保険と国民年金への切り替えは退職日の翌日から14日以内が期限のため、空白期間がある場合は退職後すぐに手続きを始めましょう。
健康保険の手続き
退職すると会社の健康保険の資格を失うため、入社まで空白期間がある場合は以下のいずれかの方法で健康保険に加入し直す必要があります。
- 国民健康保険に加入する
- 任意継続被保険者制度を利用する
- 家族の健康保険の扶養に入る
国民健康保険は、退職日の翌日から14日以内に、住んでいる市区町村の窓口で手続きが必要です。
任意継続被保険者制度を利用すると、退職日の翌日から20日以内に申請すれば、最長2年間は在職中の健康保険に加入し続けられます。ただし、在職中は会社が負担していた分も含めて、保険料は全額自己負担です。
家族の扶養に入る場合は、年収130万円未満などの条件を満たせば、配偶者などが加入する健康保険の被扶養者になれます。失業給付を受け取る場合は、給付の日額によって扶養の条件を満たさなくなる場合があります。
国民健康保険の保険料は市区町村の窓口で、任意継続の保険料は加入していた健康保険の窓口で試算できるため、両方を比べてから選びましょう。
雇用保険(失業保険)の申請
失業給付(雇用保険の基本手当)は、住んでいる地域を管轄するハローワークで、求職の申し込みと離職票の提出を行うと申請できます。受け取れるのは、原則として退職前の2年間に雇用保険の加入期間が12か月以上ある人です。申請に必要な主な書類は以下のとおりです。
- 離職票
- マイナンバーカード(または通知カードと本人確認書類)
- 証明写真
- 本人名義の通帳やキャッシュカード
申請後は7日間の待期期間があり、会社都合の退職であれば待期期間の終了後から支給の対象です。自己都合の退職では、待期期間のあとに原則1か月の給付制限期間を経てから支給が始まります(過去5年間に2回以上給付制限を受けている場合は3か月)。
給付日数は、年齢や雇用保険の加入期間、退職理由によって90〜330日の間で決まります。受け取れる期間は離職日の翌日から1年間で、過ぎると給付日数が残っていても受け取れなくなるため、退職後は早めに申請しましょう。
年金の切り替え
入社まで空白期間がある場合は、厚生年金から国民年金への切り替えが必要です。退職日の翌日から14日以内に、住んでいる市区町村の窓口で手続きしましょう。配偶者が会社員や公務員で、その扶養に入る場合は配偶者の勤務先を通じて手続きを行うため、本人が窓口へ行く必要はありません。
国民年金の保険料は在職中のように給与から天引きされないため、納付書や口座振替で自分で納める必要があります。収入が減って納付が難しい場合は、退職を理由とした保険料の免除や納付猶予を申請できます。
住民税・所得税の確認
住民税は前年の所得をもとに計算されるため、退職して収入がなくなっても納付が必要です。1〜5月に退職した場合は、5月分までの残りの住民税を最終給与や退職金からまとめて差し引かれるのが原則です。6〜12月に退職した場合は、残りの住民税を市区町村から届く納付書で自分で納めることになります。転職先が決まっていれば、手続きによって転職先の給与から引き続き天引きしてもらうことも可能です。
所得税は、年内に再就職しない場合、源泉徴収票をもとに翌年の確定申告で精算できます。
退職手続きのチェックリスト
退職手続きは会社とのやり取りから公的な手続きまで項目が多く、1つでも忘れると、退職後に会社へ書類を請求し直したり、手続きの期限を過ぎたりする場合があります。チェックリストで1つずつ確認しながら進めれば、こうした抜け漏れを防げます。退職手続きでやることは、以下のチェックリストのとおりです。

退職日が決まった時点で一度目を通しておくと、期限のある退職後の手続きにも余裕を持って取りかかれます。
退職日から逆算して手続きを進めよう

退職手続きは、就業規則と転職先の入社日をもとに退職日を決めるところから始まります。退職日が決まれば上司へ意思を伝える時期や引き継ぎ、有給休暇の消化の日程も逆算して組めるため、退職当日まで余裕を持って準備を進められます。
入社まで空白期間がある場合は、退職後14日以内に健康保険と年金の切り替えが必要なため、退職前に自分に必要な手続きを確認しておきましょう。
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